萩原さんご夫妻が「のらりくらり、野良で暮らそう」と始めたのらくら農場。作りたいものを作っていたらスタッフと取引先が増え、就農20年で20倍にまで成長しました。現在では、約7.5haで約50品目の作物を有機栽培し、ハイシーズンには16名ほどのチームで運営をしています。
身体に優しい野菜作りを目指し、畑のミネラルのバランスを考え、 標高1000mの湧き水が豊富な場所で、有機野菜を栽培しています。
のらくら農場では農薬・化学肥料・除草剤は一切使っておりません。 メインとなる堆肥のほかに牡蠣殻、海草、鉱物由来の各種ミネラル資材など20種類を超える肥料を使用しています。 鶏糞は抗生物質を使用しないで育った鶏の発酵鶏糞を使うなど、出来る限り安全性の高いものを使っています。 有機肥料といえども、質と量を間違えると安全といえなくなる場合があり、お医者さんが患者さんを診るように、 作物を丁寧に観察し、今ある状態を見極め、状況にあわせてきちんと作物に寄り添うように仕事をしています。
のらくら農場では、農業のコツや感覚など「暗黙知」と呼ばれる部分を、理解しやすく見て分かる予定表やソフトへの入力など「形式知」に変換し、それをチーム運営によって「集合知」にすることで、農場としての経験値、知識量が増え力になる体制を整えています。
またのらくら農場の特徴である、スタッフの年齢と経歴の多様性、そして数品目に限定しない多品目で中量生産の農業にも、のらくら農場ならではの強みが。スタッフの平均年齢は農家の平均年齢の約半分の33歳。集まるメンバーの経歴もIT企業や料理人、海外青年協力隊の出身など多岐にわたり、そのスタッフ個々の前歴の経験などがチーム経営にも反映され、多品目栽培の実現につながっています。
時には害虫被害や台風の被害にあい、数百万円分の作物を失うこともあったのらくら農場。失敗の中から見つけてきた農場運営の公式、畑作りや作物作りの公式、チーム作りの公式が紹介されています。地域の生産者みんなが成功できるような取り組み、メーカーや小売とのお互いの未来を見据えた取り組みなど、多くの人に活きる内容が紹介されていますので、最後までお見逃しなく。
例えばこのページではのらくら農場のチーム経営の根底にある「集合知」の考え方について紹介されています。この作業をするにしても、集約した経験を元に効率的に進行する多くの要素を含んでいます。
のらくら農場の経営についてはもちろん、決して農業の視点だけではない、他の職種や多くの方に拓かれた内容であり、スタッフの空気感やのらくら農場の一日の様子、働きかたまで伝わってくる一冊です。
1971年、千葉県松戸市生まれ。大学卒業後、東洋エクステリア㈱ (現LIXIL)に営業職として勤務。後に妻となる彼女に触発され、農業に関心を持つ。持ち前の行動力で農業に突き進み、サラリーマンを辞め、埼玉県小川町の霜里農場で11ヶ月、住み込み研修を受ける。
1998年、長野県八千穂村(現・佐久穂町)で就農し、夫婦2人で75aから小さく農場をはじめる。現在は約7.5haで約50品目の作物を有機栽培。ハイシーズンには16名ほどのチーム(組織)で運営。これまで農家ごとの暗黙知だった栽培技術を形式知にすることで生産性を向上。さらに生産者同士の集合知へと発展させることで、付加価値の高い事業モデルの構築に取り組む。
2014年、「TEDxSAKU」で「集合知の農業へ」を講演し、反響をよぶ。2019年、「オーガニック・エコフェスタ」で開催される栄養価コンテスト(一般社団法人日本有機農業普及協会主催)では3部門で最優秀賞を獲得し、総合グランプリを受賞。2020年はケール部門で二連覇。農業界のイノベーターとして、消費者・商業者から注目と共感を集めている。妻と二男一女。
農場を作り、スタイルや強みを作り、チームを作り、仕組みを作ってきたのらくら農場のこれまで、そしてこれからの未来を見据えた内容が綴られた一冊。