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PAPER COLLECTIVE MAGAZINE:動きを通して形作られるもの

ストア:KOZLIFE掲載日:2024/01/28
建築とデザインのバックグラウンドを持つ Of Atoms & Lines は、物理的・数学的概念にインスパイアされた作品を制作するために、さまざまなテクニックを組み合わせています。今回は、彼女の芸術的側面をより理解したうえで作品を知ってもらうために、いくつかの質問を投げかけました。
アーティストとしてのキャリアを追求する前は建築家として5年以上学び、働いていたそうですね。大胆な行動だと言う人もいますが、仕事を辞めてロンドンに移住することを決断しています。進路を変えたきっかけは何ですか?(インタビュアー:Paper Collective)
そうですね。仕事を辞めてロンドンに引っ越すという決断は、1年ほど自分自身を見つめたのちに下しました。当初、私が建築の仕事を志したのは、建築がアートに最も近いと感じたからであり、それと同時に、アートが抜きん出た才能を持つ人だけが追い求めることができるユートピア的な夢のように感じられたのに対し、建築は地に足のついた選択だったからです。副業としてアートを少しやってみて、それでどうなるか見てみようと思いました。建築家としてのキャリアの中で、本当に素晴らしいプロジェクトに携わることができたのは幸運でしたが、私の中で、不満や満たされない気持ちが大きくなってきたんです。このことが、自分自身と正直に対話するきっかけとなりました。

物心ついたときから、ずっとアーティストになりたいと思っていました。私の最初の記憶は、私が4歳のときの父の姿です。父はよく、真っ白な紙の上に馬を描いてくれました。私はそれに色を塗り、小さなフォルダーにまとめたりして。父が単純な線から何かを作り出すのを見ている間、私は熱心にそれを見つめ、イメージが抽象的なものから具象的なものへと変化していくにつれ、徐々に形が識別できるようになったときのあの深い興奮を覚えています。それ以来、一枚の紙に描かれた線という単純なものに対して、これほど強いものを感じたことはありません。

コミュニケーションや思考するうえで私に最も適しているのは、常にビジュアル的手法です。目で見たり頭の中でイメージしたりすればそれを理解することができるというのが、私の脳の働き方なんです。アートはこの世界を目に見えるものにし、近づきやすくしてくれます。このことは、私にとって常に人生で追い求めるべき最も重要なことですね。振り返ってみると、1年間自分を見つめ直したあの時期、父とのこの特別な思い出が、私の進路を変える明確さと勇気を与えてくれたのだと言えるでしょう。
「Of Atoms & Lines(原子と線)」という名前から、あなたの芸術スタイルやキャンバスにうつしだすモチーフがうかがえますが、このアイデアはどこから生まれたのですか?
アイスランドに「Of Monsters And Men」というのインディーズバンドがいるのですが、そのバンドの音楽をよく聞いています。バンド名の響きもいいですよね。何世代にもわたって語り継がれてきた、昔のおとぎ話のようだと思いました。同じような気持ちを伝える名前が欲しいと思っていたので、わたしの芸術的な表現に欠かせない2つの重要な要素を選び、こうして「Of Atoms & Lines」が誕生したのです。
あなたのアートは「動き(movement)」というコンセプトについて多くを語っていますが、動きに対する情熱や興味はどこから来ているのでしょうか。また、そのコンセプトをあなたのビジュアルスタイルの焦点に据えるようになったきっかけは何だったのでしょうか?
わたしの動きに対する興味はコンテンポラリーダンスへの憧れからきていて、フルタイムの建築家として働いていた時期には、オーストリアのグラーツにあるオペラハウスのダンサーたちとコラボレーションをしたこともあります。特に、即興と空間への意識というコンテンポラリーダンスの2つの要素には興味をそそられました。ダンサーたちは、与えられた空間の枠の内でのびのびと「動き」のパターンにアクセスし、表現することができるようです。それは、決まった音楽の枠組みの中で即興演奏するジャズ・プレイヤーを彷彿とさせるものがありました。この経験はわたしの心に残りました。ロンドンでの修士課程の一環として私たちが卒業論文のテーマを決めなければならなかったとき、わたしすぐにはコンテンポラリーダンスをやりたいと思い、幸運なことにグラーツからロンドンに移ったダンサーの一人とコラボレーションすることができたんです。

ムーブメントと即興のアイデアに関する理論的な研究を通じて、わたしは、ランダムに渦巻く粒子(原子)による世界の創造を探求したローマの詩人 Lucretius(ルクレティウス)の『de rerum natura』という出版物に出会いました。このことが、数学と物理学の世界への扉を開けるきっかけになったんです。そのときから、わたしの内なる芸術的な声と視覚的なスタイルが形成され始めました。それ以来、わたしの情熱は科学的概念を探求し、そのための興味深いビジュアルストーリーを見つけ出そうとしています。概念的なレベルでは、私たちの現実に関するほとんどのアイデアは、動き(時間の流れ、光の速度、時空のゆがみ、波動のような色など)を通して説明できると感じていますし、視覚的なレベルで言えば、動きを表現する最もシンプルな方法は「線」なのです。この2つの核となる側面が、抽象アーティストとしてのわたしのビジュアルスタイルに影響を与えています。
Paper Collective のために4つの作品を制作してくださいましたが、このコレクションを制作したきっかけと、あなたにとってこのコレクションが持つ意味を教えてください。
この4点は、わたしが現在進行中の探求的シリーズ「Entropy(エントロピー)」の一部です。エントロピーとは、物事が秩序ある状態から無秩序な状態へと移行する確率を表す科学的概念のこと。これは、すべての物事に一方通行の方向性を生み出し、私たち人間が時間の流れとして認識するものなのです。わたしは時間という概念をとても魅力に感じています。なぜなら、時間は私たちを非常に深く定義しており、私たちは魚が海に生息するように、時間に生息しているからです。時間は必然的かつ主観的なものなのです。時に、時間の流れがとても早く感じられることもあれば、人生のある瞬間が永遠に続くように感じられることもあります。このシリーズでわたしが考えたのは、時間の認識をビジュアル的言語に落とし込むことでした。時間の本質、流れるものと同時に断裂されたものという、この二元的な感覚を表現するものです。
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Paper Collective|Entropy Sand / Entropy Blue ポスター 30×40/50×70 【受注発注】
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8,800円~
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