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love letter from K. Season8-9「またね…の気分」

ストア:KOZLIFE掲載日:2024/03/28
コンセプター・和田健司さんによるエッセイ「love letter from K」。
KOZでのお買い物がもっと楽しくなるヒントをお届けします。

season8-9 「またね…の気分」

なかなか冬が終わってくれません。本当なら桜の写真でも撮りながらお散歩の記事でも書きたい所ですが、外は極寒、そして突風が吹いております。

おめでとう

そんな3月は卒業シーズン。つい先日、非常勤をしている愛知県立芸術大学でも卒業・修了制作展がありまして、講評をしに行ってきました。普段は掃除をしてもしても片付かないアトリエから全ての物が撤去され、同じ空間と思えないほど綺麗に。展示ギャラリーに姿を変えた大学内には、ずらっと作品画並び、ご両親と思われる方々が見に来ています。
実に微笑ましい雰囲気の中、作品を見て回ります。今年の卒業生は、2020年4月入学ですから、コロナ禍の中を4年間駆け抜けました。入学式もままならず、様々な制限の中、なんとか勉学に励んできました。その影響もあるのでしょう、「自分」「つながり」「生や死」などのテーマを掲げる学生が多く見受けられます。
デザイン業は、基本的には社会と接点を持って成り立つ職業なのですが、いかにそれが難しかったかが伝わってきて、胸が痛い反面、そんな状況でも、何とか精神バランスを取ろうと頑張っているのが作品から感じる事ができ、心の底から「よく頑張ったね。卒業おめでとう。」と伝えたのでした。

出会いがあれば別れもある

そんな4年間を、色々な人が様々な想いで駆け抜けてきたのですが、ここ1年位の間に特に気になっているのが、店舗の閉店。Google Mapや食べログの、お気に入りリストを眺めていると、「閉業」の赤い文字がポツポツと目立つようになってきました。いつか行こうと思っていたあのお店も、永遠にその時がやってくることはなさそうです。

久しぶりに秋葉原へ出向いた日のこと。車でPodcastを聞きながら向かっていると「あの秋葉原の名物ビル、肉の万世が33年間の営業に終止符を打ち閉館します。」「寂しい!あそこのパーコー麺が美味しくてね。」と流れてきた。へぇ〜と何の気なしに秋葉原へさしかかった交差点で信号待ち。目を凝らすと“万世橋”の文字が。ん?…と数秒考え、見上げれば「肉の万世」のビルが目の前にあるじゃないですか。なんじゃ、このタイミングで、しかもこのニュースが流れるという事は、行けってことか!?でもこのタイミングで食べなければ一生出会えない→いや今日の夕飯はここしかないでしょ。と、諸々の用事を済ませ、時刻は20時、また万世橋まで戻ってきたのでした。

狙うはパーコー

食券を買い、並ぶ事数人。連日大行列だと聞いていたので、店員さんはさぞかし疲弊してるだろうと思ったのですが、何やら店内はとっても楽しそうな雰囲気。ほぼ全員がパーコー麺を頼み、思い思いの表情を浮かべながら頬張っています。食券を渡し、赤い提灯を眺めながら「なんで今まで知らなかったんだろうなぁ…」なんて考えていると、目の前に最初で最後のパーコー麺が登場。
なっかなかのインパクト。一口スープを飲めば、すっきりしてて甘めの醤油出汁。カラッと揚げた豚肉はスープに入っていてもまだカリカリ。肉汁がじゅわっと出てくる瞬間は「肉の万世ここにあり!」と脳内でセリフが流れてきます。そして、ツルツルと弾力のある中太麺との相性も抜群。
これは、もっと早く出会っていたかった…、とスープ→パーコー→麺→スープ→のループを繰り返していきます。すると、パーコーの衣がどんどんとスープに染みて柔らかくなっていくのです。それと同時に肉の脂もスープに溶け出して、ラーメン全体が少しパンチのある絶妙な風味へと変化していきます。後半は一体感がより増し、飽きる事なく完食。この味の変化はパーコーメンでしか楽しめない、いや、肉の万世のパーコー麺でしか味わえない事に気づいたのは閉館1ヶ月前。「あぁ…」後悔の念と同時に、ギリギリでこの味に出会えた事に感謝するのでした。

またね

あきはばらには肉の万世がある。33年間のご愛顧ありがとうございました。そう書かれた看板をノスタルジックな気持ちで見ながら、物思いにふけります。

その土地に根付く名店でさえ、撤退を余儀なくされる事が最近多い気がするのです。その反面、イオンやららぽーとのような大型ショッピングモールは増殖の一途。「ようやく我が町にもイオンができた!」なんて喜んでいては×なのです。

秋葉原だって、数年後はヨドバシカメラに行くために訪れる街になるかもしれない。地方へ旅行に行っても、買い物をするのはイオン。それってどうなんでしょうね?
反面、「あきはばらには肉の万世がある。」と自分で言い切れる肉の万世はすごい。偉大です。

土地にはそれぞれ根付いた文化があり、それを支えているお店がある。今そういうお店がどんどん消えていっている。これは由々しき事態です。
そういったお店って、なんとなくですが、儲けるのがあまり上手じゃない気がするんです。欲しいのはお金じゃなくて、愛されたい訳ですから、商売自体は下手な事もあるでしょう。そこに住む人達の世代は変わるし、どんどん古く見えていくのは仕方がないかもしれません。

だからこそ、僕達消費者は「いつまでもあると思うな」と言い聞かせ、そこを訪れ、記憶に、記録にとどめておかなければいけない。なくなってからでは、遅いんです。

こんな話を聞いて、頭に思い浮かぶお店、あなたにはありますか?もしあったら「またね…」となる前に行ってみてはいかがでしょうか。

肉の万世は、2024年3月31日まで、パーコー麺が食べられます。

つづく

スタッフコメント

「いつまでもあると思うな」……この言葉を聞いて行っておきたいお店。それぞれのこだわりが詰まった個人店ばかりが思い浮かびました。そのお店でしか味わえない経験は大切な宝物になるはず。「またね…」となる前に行かなくちゃ!と思いました。

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和田 健司

オランダDesign Academy EindhovenにてDroog Design ハイス・バッカー氏に師事、コンセプチュアルデザインを学ぶ。 同大学院修士課程修了。大手広告代理店勤務の後、2011年 “what is design?”を理念とする(株)デザインの研究所を設立。研究に基づく新たな気付きを、個人から企業まで様々な顧客に価値として提供し続けるコンセプター。


和田 健司

オランダDesign Academy EindhovenにてDroog Design ハイス・バッカー氏に師事、コンセプチュアルデザインを学ぶ。 同大学院修士課程修了。大手広告代理店勤務の後、2011年 “what is design?”を理念とする(株)デザインの研究所を設立。研究に基づく新たな気付きを、個人から企業まで様々な顧客に価値として提供し続けるコンセプター。
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